魔王、フライパンを握る

古城の玉座の間。魔王アズールは深紅の瞳を炎のように燃やし、苛立ちを隠せずにいた。「また焦げ付いたか！」

アズールが手にしているのは、先日人間界から持ち帰ったという調理器具。かの地の言葉で『軽金熱炒』と呼ばれているらしい。魔界の料理はどれもこれも焦げ付きやすく、美味しく作ることが難しい。しかし、この『軽金熱炒』は、熱効率が良いとかで、焦げ付きにくいと聞いたのだ。

「フン、人間どもの道具など…」

最初はそう思っていたアズールだが、使ってみるとこれが意外と便利。軽くて扱いやすく、熱の伝わりも早い。今日も今日とて、伝説の魔獣の肉を使ったステーキに挑戦しているのだが…。

「焦げ付いては、せっかくの魔獣の肉が台無しだ！」

アズールは額の汗を拭い、慎重に『軽金熱炒』を操る。ジュージューと美味しそうな音を立て、肉の表面には美しい焼き色がついていく。

「…ふむ、これはもしや成功か？」

アズールは小さく笑みを浮かべた。魔界に美食革命を起こすのも、そう遠い未来ではないかもしれない。その時、背後から声が響いた。

「魔王様、緊急事態です！」

【次回予告】勇者、乱入!?

このお話はフィクションであり架空の話です。

↓[PR]↓